今、何を思う?
JUNIAM501
JUNIAM501
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。
僕の、というか私の卒業論文テーマはNASA成層圏エアロゾルデータと東京上空での実測データの比較だったが、志なかばで関連への就職を当時は諦めた。
2020年夏、筑波工科大学主催のMBAに関する有償セミナーに参加した。今あるリソースを活用しセミナーのノウハウを現職に水平展開する予定だった。しかし、コロナの影響で在宅ワークが続き、会社業績の回復時期が未定のため、いつ現場に本格的に復帰できるか予測が不可能な現状だった。
そのセミナーで衛星関連ベンチャーの話を聞き、宇宙空間の清掃事業にも興味を持った。それは国際宇宙ステーションの運営にも大いに関係する。しかし私は理学修士や博士は取得しておらず業界への大志は夢で終わっていた。
2020年10月12日の深夜、Univerce.comのウェブページで火星が地球を中心にして太陽と共に一直線に並び2035年までで1番地球に接近するのが10月13日だと知った。夜中に星座アプリで火星を確認し、夜空を見上げたが、火星の方位が90度程ずれていた。そもそもコンパスが90度ずれていたので、携帯電話を再起動した。長い間、夜宙を見上げていなかったんだなと感じる。赤方偏移という言葉を思い出した。
そうしているうちに、ある求人を発見した。偶然が重なった結果だった。未経験でも応募が可能という文言を見つけ、応募を決意した。国際宇宙ステーションの運用に携わる仕事だ。
息子たちもロケットが好きだ。岩島天文文化村に家族で宿泊した数年前の真っ暗な夜、望遠鏡が億単位の価格であることに子供たちが興奮した。連星という言葉を初めて知り宇宙空間全体では、二つセットが当たり前であることに驚いた。
現職では緊急対応のため昼夜シフトを15年間続けて来た。目立った体調の変化はなく、つくばでもシフトに順応できる自信がある。
つくばでは技術英語に長けたスタッフが大勢いるが、一切妥協しないほど隙を見せないことが多い米語の立て板に水に、苦労することは多いと推察する。
そのような環境においても当事者双方の気分を害さぬよう事態を収束してきた交渉実績を生かしたい。
中庸な姿勢を今後も重んじ、問題を柔和に解決してきた交渉力に加えて、つくばでは覚悟を持って可能な限り早く正確に技術を吸収することで、将来、対峙/協力/切磋琢磨するであろう関係機関とお客様との間でパイプ役として活躍し貴社の業績・成長に貢献したい。
運用管制に今後携わる若い人材に貴社の技術を伝承するためにも、DXを用いた持続可能な
ノウハウ継承の為の業務にも興味がある。
世界中で亡くなられた方々に対しては不謹慎な表現だが、このコロナをチャンスへ変えたいと強く思う。
偏った思考や行動をとらず常に冷静を保ち、ファシリテーションを意識することでスタッフ間の議論を促す。妻の理解もあり東京から茨城への移住/転職に家族単位で大変前向きである。
そのようなことをフォームに書いてエントリーをした。ただ、年齢は記入せずに送信した。新卒の就職活動時以来の興奮だった。
数日後、その会社から一次ウェブ面接の連絡が来た。信じられなかった。ワクワクが止まらなかった。しかし宙に浮いているようなふわっとした感じではなかった。その日からいろいろな資料を漁り、図書館へも通い関係するであろう本を10冊以上借りて勉強を始めた。
その数日前、ある夢を見た。田舎の海岸線に打ち寄せる、ところてんのような綺麗な波。足元の小石には苔がついていて、ぬるっとした感覚の土踏まず。波打ち際を歩くと、その石ころに足を取られよろついてしまう。そして目頭から汗がにじみ目が痛い。日差しは厳しい、8月の午後。波が足元を行きすぎる。石にあたり波紋ができ、ピラミッドのようなグレーのしましま模様を描きながら、また沖の方へ波が帰っていく。砂鉄だろうか。黒い砂粒は何とも言えない、イスラムの模様のような波紋を残し、波紋というより、むしろ既にどろっとした砂の紋だが、何とも奇妙で、ただそのまま美しい景色だった。
浮き輪に乗って仰向けになった。水平線を逆さに見ると、なぜか空は地球儀を外から見ているように球体に見えた。なぜだろう。夕日が傾いていく。オレンジ色のグラデーションが水平線から茶色、こげ茶、濃いオレンジ、薄い橙色、そして灰色と筆で線を描いたようにくっきりと境界線のその境が認識できた。相変わらず空は丸く天球のようだった。逆さまに見ると、こんなに景色が違うのかと普通に戻った状態で、島々とその空を見上げた。その時はなんだかポカンとした感じがした。
また、逆さまになり、頭頂部を水面につける。また天球が見える。雲も曲がって見える。水平線に夕日が沈んでゆく不思議な感じがした。
子供たちは浜辺でカニを追っかけている。妻は海岸線の遠くの方まで歩いて行っている。他のファミリーが波打ち際でワイワイ騒いでいるが、水着を持ってきておらず、足首あたりもしくはズボンの裾が濡れて
キャキャッと言うような感じだ。
夕日が沈む頃、午後8時前だったかな。波打ち際でクラゲに刺されたようなピリピリとしたような感じが、太ももや腕を襲った。そこで目が覚めた。
『卒業論文はどのようなものだったのでしょうか?』
Web面談では、事前に読みこんでいた卒論の概要を説明した。当たり障りのない会話が続いた。自宅の部屋の一角でデスクに向かい、顔にライティングを当て顔色は明るい感じにしていた。ノートパソコンの下に本を数冊重ねカメラの位置は目線に合わせていた。問題なさすぎるほど問題なくWeb面接は終了した。
面談の後、家から出たくなり裏山に向かった。裏山には長い階段があり、階段を登ると木漏れ日が見えた。木漏れ日はこんなに放射線状に光が広がるのか。光の破線が放射線状に全方向に広がっていることに初めて気づかされた。太陽は真上にあった。破線光は黄金のシャワーのようで、シャワーヘッドを真下から見上げて、全部浴びているような感じがした。
もやもやは止まず、気分転換に本当に海に行ってみた。波打ち際を裸足で歩くことにした。
水面を流れる小川は、砂浜の中から地上に染み出た水が根っこのような線をたどって、大きな川を作る。
そして波打ち際に平行に川を作って、その川底は大蛇の鱗のよう。
うねうねと凸凹な大小様々な鱗が重なり合い、その上には、金色のとても小さな粒もさらさらと流れ、少し大きめの黒い粒は川底にたまり水はキラキラと輝きながら流れていく。
そして大蛇の鱗には太陽が反射し、ギラギラ光っている。
一方水平線の1番遠くを眺めると、そこはまるで0.3ミリのボールペンで波線を描いたようにギザギザしている。その上を2隻の船が同じ方向に右側に向かっていく。なぜ水平線はまっすぐではなくギザギザに見えるのか。波のせいだろうか。
手前に目を戻すと、波は波を追い越し小さな波紋を幾重にも重ねながら波打ち際に到達し、そして折り返す。
そしてまた重なり合い絶妙なハーモニーと、破壊を表しているように見える。
棚田のような波打ち際から平行に水平線の方を眺めて、波打ち際にまた目を戻すと棚田が打ち寄せてくるように、そしてその棚田の先端の白い泡は波の先端だが、ダンゴムシの大群が打ち寄せてくるようにも見えた。
足元に目を落とすと水面を拭く風の動き、水中の泡の動き、そして波が寄せ、波打ち際から沖の方へ流れていく。砂や水が四方八方に複雑に動く。1つとして同じような動きはなく、そしてすべての動きがハーモニーのような打ち消し合いのようななんとも言えないまとまったような、いやまとまってはいない。
しかし混沌とした中に心地よさを感じる。気持ちいい線があり、丸があり斜めのカーブがありキラキラとした波打ち際の銀色の泡があり、白い波があり、白い泡があり、オーシャンブルーがあり、緑があり、山があり、茶色い草もあり、船もあり、しかし雲は全く上にはなかった。
水平線には白い雲を見ることができる。雲がこちらに向かって、あちらに向かって敬礼をしている。帽子は三角で、右肩から右肘は垂直に伸びとても綺麗だ。左肩には肩パットが入っている。そんな形状の綺麗な敬礼を後から見るような雲を見つけたところでこの旅は終わりそうだ。
沖合の上空には、鳶が1羽。そして私の頭上にはトンボが1匹、そして遠くの方にはベビーカー?違うな、犬のベビーカーのようなものを押すご婦人が1人。そして私だけ。さっきまで私だけだった。まるでプライベートビーチだ。登場人物、動物が増えた今でもまだ充分プライベートビーチだった。
先ほどから水が流れ出ていた大蛇の小川の砂の上を足の裏でタップすると、その足から半径5センチから10センチの円を描くように砂が白く輝く。砂の中の水分が動いているようなイメージだ。
最後に小川の水中の山脈に目を落とすと波が来る度に、その山頂で砂埃が舞うようにモヤがかかる。そして波が行き過ぎるとその砂埃は止む。また砂金のような波が立つ。そして水面の風はそれとは垂直方向に流れる。90度違うのである。波は前から後ろへ流れてくるが、水面の風は右から左へと流れていく。白い筋は右から左に流れていく。縦の線はゆらゆら揺れながら、なんだかクラゲの足のようにも見えた。
採否はその後すぐに出た。
そして今までと同じ仕事の繰り返し。人生はそんなものだ。しかし、まだ楽しみなことは沢山ある。なぜかそう思えた。楽しいことではなく、楽しみなこと?
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今僕が楽しみなことは何かを書いたり、何かを描いたりすること、何かを作ったりすることである。
手先を使うと脳が活性化する。確かにそうである。ピアノを弾く、絵を描く、いずれもワクワクが止まらない。
ほんとにそうなのか?実際に行動している時は、無心で没頭しているので、楽しい、面白いと実感しながら、絵を描いたりしているわけではない。ただインスピレーションで描けてしまった。偶然の描写は描いた瞬間に、
「これだ!いい感じだ!」
そう一言一句思い浮かぶわけではないが、良い出力をしたときには、脳が瞬発的に喜んでいることがわかるものだ。
しかしそれは意図してできたものではなく、偶然の算出というか、なぜその描写が生まれたかも、よくわからないうちに出来上がってしまうものである。
深夜スケッチに夢中になっているときに、友人の深田から連絡が来た。
「久しぶり、最近どうしてる?」
深夜帯だったと言うこともあり、僕はすぐに返信せず翌朝、
{何も変わらないよ。いつもと一緒。最近走ってる?}
「週に1回位だね。今度飲みに行こう」
私は近いうちにという返信をして、そのやりとりはそれで終わった。
私と深田は、大学の同級生で、今まで何回かマラソンを一緒に走っている。
私たちが20代だった頃、何をきっかけだったか覚えていないが、10キロマラソンやハーフマラソンを何回か走った後、フルマラソンに挑戦し、すべてのマラソンにおいて2人とも完走した。
私は当時、まだ子供はおらず、深田は小学生の子供がいた。子育ての楽しみや大変さなどは知る由もなかった。
私は昼夜を問わず、時間があれば走っていた。幼少期は長距離走はとても苦手で、すぐ息が上がっていた。
母と運動会の前に、深夜の小学校のグラウンドを走っていたこともある。母に連れられ少しでも長距離走の順位を上げようと母が計画して僕を走らせた。僕は嫌々ながらもそれを実践し、結果順位は少し上がった。長い距離を走ることに抵抗があったが、練習すればタイムが良くなることを実感した。
絵は走る事とは少し違う。絵を描くことに苦手意識は元々なかった。
小さい頃からよく絵を描いていた。テーブルの裏は、唯一落書きをして良い場所だ、と母に言われ無心に描いていたことを覚えている。
そのテーブルはもう実家にはないが、いちど子供たちと一緒に見たかった。子供たちには、今よく絵を描いているので、私が僕の頃、どんな絵を描いていたのか、子供と共有し、そのテーブルの裏にも子供の絵を追加したかった。結果的に合作だ。時を経て当時の僕の作品と今の私の子供たちの作品が混ざり合い、どんな絵ができていたのか想像すると、いや、想像しても想像できないが、それも想像するだけで楽しい。少し笑顔になる。
「いつゲーセンいける?」
私の次男からそう言われ、即答はできなかった。仕事の疲れからか、次の休みをカレンダーで見ることはしなかった。
ところでよく見る夢の話だが、テトラポットを駆け上がる波はあまり面白くない。砂浜の波は面白い。波が引く時、ごろごろごろごろと言う。何の音かと思ったら、黒い石がざわざわしながら、ごろごろ転がっている。
そのそばで砂浜から生えた草木は日光浴をしている。根を掘ると根っこはしっとりしている。彼らは塩水を食料にしているのか、それでも枯れない。この環境に順応している。葉っぱはパサパサ。日当たりは良い。波の水しぶきが少しだけ飛んでくる。波打ち際で生きる植物たちも、花を咲かせている。黄色い花だ。そしてクローバーの葉っぱ。なぜこんなところに黄色い花が咲いているのだろう。受粉するのだろうか、蜂が飛んでくるのだろうか。そういえば、蜂を見たような気がする。
林の茂みを抜ける時、顔がチクチクした。痛い。痛い。
松の葉っぱだった。
寝転がると、太陽を左上に暖かく感じる。
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配置が換わった。
突然の辞令だった。勤務は八王子。道が狭い所も運転する必要があると、直感的に思った。茅場町はまだよかった。そういう面では。
「至急至急、 .....また車外では必ず防塵マスクを着装。繰り返す、必ず防塵マスクを着装されたし。以上、警..」
あれはいつの夢だったのか?ヌルっとした苔の生えた石を思い出した。それもつかの間、210系の運転席に座り、黒色のラバーグローブをはめた左手で10時から9時の位置に手首を軸にハンドルを動かし一周させた後に再び7時へ、車体は右へ傾く。目線はルームミラー、右サイドミラ―、右前方、正面、左サイドミラー、目視による左後ろの巻き込み確認。同時に相方が車内で発した。
「左前方、左巻き込みなし、歩行者なーし」
後輩は無線を外部にし、
「交差点侵入しまーす」「侵入します」
と、2回繰り返した。
交差点に進入する前からそう言ってほしかったと内心思ったが、そんなことより気になることが発生することを、その時はわからなかったが、 もっと早くから言うように とは走行中であることもあり、私は発しなかった。
通常はやらないが、無線を左手で取り右手に握りなおした後その右手を口元に当てた。唇に何度か人指し指の第二関節内側の骨が当たった。カラオケボックスのマイクの匂いがするのはなぜか。遠心力で体は右に傾き、その右腕の肘はパワーウィンドウのつけ根に突き刺さる。
なぜ右手で無線を握ったのか?答え:運転するときは左利きだから。オートマでもシフトレバーはできればハンドルの右側に欲しい。いくら800の車両でもそこまでの特注はできない、この世界に、この時代に、この社会組織に多様性はほとんど存在しない。犬はいいすぎだがハムを食む猫もいるのは昔から。
そんなどうでもいいことを考えているのはペア長の私。夜遊びが好きそうな若い相方のそれなのか?と、この無線の手元の問題原因を考えている、場合ではない。しかし気になる。昔から鼻はいい。だから今ここにいる。
無線の周波数を切り替える。
すでに本社から八王子への通達は済んでいるようだ。
「...近い局、向かわれたし。以上」
{八王子205、向かいます。}
助手席の若いのが、そっち側のアクセルペダルを何度も踏み込む。
八王子の自ラ車両は、一部220系に切り替わり、サイドミラーが黒い。走行距離が長く、色々と問題がある200系は退役寸前で背番号が消えている。
102と書かれていたようだが、ランプを正面から見ると数字3桁が消えている。うっすら数字が残っているような、目を凝らせば数字が見える。元々は警らの車両か。散々走って走って急発進、急ブレーキの繰り返し、べた踏みの無理ゲーの挙句の果てが9区。最新の車両をこっちに最初から回せよと思うのは、自然のことではないか。そう思わないか?君も。
母の日に、バラとカーネーションを買ったことがある。店内でラッピングの話をした後、私は店から出て、少し離れたスペースに移動した。
女性の店員二人が何かを話している。壁一面に広がる多種多様なリボンとラッピングの中から、どれにしようか、あれでもない、これでもないと真剣に話しながら、何かを選んでいる。
若い方のお姉さまが、こう言った。
「あとはこちらでやりますので」
私はリボンとラッピングを選ぶ必要はなかった。
しばらく待たされた。結構待たされた。早く帰りたい。そう思った。結果、最高の愛情あふれるラッピングになった。僕が一人では考えつかないような、チャームが付いた女性が好きそうなラッピングだ。そのスタッフ2名は、私の年齢より15以上うえだが、感性や愛情は私と比べ物にならないほどのものだと容易に推察できた。
そして、半月以上経ってもバラは色あせず、生きていると母からの知らせで知った。
色々な意味で、強い女性には魅了され、惹かれる。バラはそんな女性の象徴のような気がした。
{soave}
「もしあなたが今辛くて、抜け出せなくても、きっと抜け出せる日が来るから、安心してください。」
「もしあなたが今楽しくて、楽しくてしょうがないなら、そのまま、そのペースを、少し落とすくらいでいいですよ。」
恩師の言葉を思い出した。平常心よ再び、僕の、私の中へ、私の元へ。
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緊急走行中の自分を俯瞰して見る。汗が今出ているのか、汗が引いて体が冷えているのか、寒いのか、暑いのか外気がどんな感じだったか、あまり思い出せない。臨場一番、健康二番。
もとい、安全第一、安全な緊急走行?
「なんだか、矛盾だらけじゃないですか。そうは思いませんか?」
かつての伝説的なTVドラマ『ナイトライダー』に登場するドリームカーを思わせる、 あの漆黒のAIスポーツカーがそんな風に言っている気がした。
臨場は結局3番か4番だった。200系が2台到着していた。1台には背番号があり、八王子の自らだったが、背番号無しの車両は、所属は八王子だが、降りてきた隊員が誰だかかわらない。
福岡県警の山野か。
その山野が目の前の背番号なし200系の後部座席右側のドアから出てきて、こちらに大股5歩で歩み寄り私の目前で、私の鼻先を見て言った。
「おう」
そう言うと、県警の2人と共に歩き出し、一礼したのちに規制線を越えて、茂みへ入って行った。
1ヶ月程前、山野から久しぶりにLINEが来ていた。
「来月東京に行く予定。糸島で捜査本部ができたんよ。関係者を追っているうちに、東京に行くことに。飯でも行こうや 東京駅の近くにランチ千円ぐらいで食えるところがあるとやろ?本店の方が得やん。色々大変やろうけど。」
どっちが大変かは比べられない。そもそも固定費やその他もろもろが違う。
自分たちが4番目だと分かったのは、もう1台の機動捜査であろう車両を見た時。それが一番車両。
所轄に引継ぎ次第すぐにでも撤収しそうな雰囲気である。ストレッチをしたり、メモを書いたりしてるのが視認できた。
手袋をして、一礼し、規制線を左手で持ち上げて潜った。乾燥した草木の匂いは心地よかった。
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知人や家族にさえ、捜査の内容は言えない。言えてもここで話すだけだ。どこなんだ?ここは。
母親に花を買った日、旧友に送る花も買った。その友達の演劇が行われるので買ったのだ。
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当日座った席は、舞台に近すぎて、セットが邪魔をして、彼女の演技や舞踊の手足が見えず、かろうじて顔が時々見えるだけだった。それも時々。ほとんど頭頂部しか見えなかった。それでもよかった。同じ時間と空間を共有でき嬉しかった。次回の舞台は必ず最初から見る。そう強く思った。
演劇のあと馴染みの和食屋を訪れた。いつも行っていた店の姉妹店で、さばみりん定食を注文した。店内には客はおらず、静かだった。唯一BGMでDEENの有名曲とミスチルがかかって、何も変わらないアイミスユーが聞こえた、ギターをやっていた学生時代を思いだした。
ユーミンの歌詞が切なくも、なんだか嬉しかった。
花は結局渡せず自宅に持ち帰った。
帰路自分が演じたわけでもないのに、燃え尽き症候群のような
ただの疲労なのか、そのような感覚を覚えた。
人が集まる場所は極力避けているが、今回は例外だった。
専修大学の付近は普段行かない場所。うろうろしたせいか、会場で人酔いしたのか、ただ足の疲れが顕著だった。
靖国神社に行った話はまた後日。これは夢なのか?そう思った。
もっと絵に没頭したいと、心が叫んでいる。
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今朝会社の近くのカフェで、旧友の里子に会った。
最初は無口だったが、笑顔も溢れた。すがすがしい感じがしたので安心した。恐らく周りのみんなも。
彼女にとっては門出だ。里子の今を尊重したい。
最後ぐらい気兼ねなく言ってねと伝えた。色々気遣ってくれて助かった。
とても勉強になった。他の要因もあったが結果元気になったのは間違いない。
元気にマイペースで今を楽しめるように。
{{””ありがとう””}}
こころの中心で、そうつぶやいた。
その非番の日の夕方が今である。防塵マスクをPC下車後しばらくして、着けた。
若いのは、着装済みだった。いつ、つけたんだ?
県警のあいつと話していた時か。その時は私にスキがあったということだ。つけ麺はいつになるのか。色々頭を巡った。
携帯型防塵マスクは、通常の装備に含まれる。胸元の防刃ベストの内側から、水筒と共にマスクを出し、水筒のみチョッキに戻し、紺色のそれを装着した。大きなマスクに耳まで覆う帽子と透明のゴーグルが一緒になっている被り物だ。視野は広くクリアだが、被るとこめかみより少し上が、両サイドとも痛い時と片方だけ痛い時がある。明らかに設計と装着試験の精度に問題あり、どこかの天下り先企業からの大量納品だろう。
「特権であると同時に、腐敗そのものではないですか?」
頭の中で、また彼が呟く。
私が返す。
{そうだとしてもそれは誰も変えられない現実};
愛想笑いと忖度の重ね合い。私の近くで得するのは彼と誰ぐらいだろうか?
真剣に物事をカイゼンしようと思っているのは一握りで、他は事なかれ主義を良しとする社会に包含されているだけの組織に従属するモノ。雇われの身である以上仕方がない。管理官であったとしても、事なかれ主義を一掃できないのが日本社会なのだから、どこに良さを見出せばいいのだろうかと言う疑念は消えることはない。
しかし消えることがない疑念を忘れることはできると知人は言う。
デパートの一階にある化粧品売り場の従業員が、ヘアアイロンを髪に当てて充いる。
首を傾ける方が鉛直真下に髪が降り、アイロンをかけやすいのであろうか。
別の美容部員は、口紅を塗り上唇と下唇を合わせたあと。「ま」と「ぱ」を同時に発するような感じで短時間で何度も口を開閉している。平和だ。それは大丸だったかOIOIだったか覚えていないが、日本橋ではなかったことは事実だ。
茂みを進む際、そのようなことを思い出していた。空手で突きが相手の懐に十分に入っていない時は、審判から不十分と言われる。今も邪念を祓うには不十分な状態だ。
この話はどうだろう。
早朝芝生をハーフパンツで歩いていた時、芝生についた水滴がかかとで跳ね上がり、ふくらはぎやすねにピンピンと飛んでくる。
なんだか心地が良い。與?シャワーがちょっとだけ当たってるような天然のシャワーが下の土から舞い上がってくる。芝生から舞い上がってくる。バッタが跳ねたり小さいバッタだ。芝は刈ったばかりでいい香りだ。
石の上を歩くときの音、土の上を歩くときの音、芝生の上を歩くときの音はそれぞれ違う。周りに誰もいないのでよく聞こえる。ザクザクザクザクザクザク、鳥さえずり、この空間をもっと楽しみたい。朝早く日が上る前にこの貴重な時間を大事にしたい。
シートを芝生に敷いて横になってみた。仰向けになると鼻からすーっと青々しい匂いが入ってくる。何かの干し草の匂い?
毎回ではない。呼吸ごとに時々鼻の中に入ってくる。上を見上げると三日月と薄い雲、水色の空。
最高である。
ここの環境をもっと楽しみたい。今楽しんでいる。心地いい。
すずめの鳴き声が左上から聞こえて、右上へ飛んでいったような。
ただ四方八方からちゅんちゅん聞こえるので、その雀がどこに行ったのかわからない。
少し目を閉じ瞑想した後、まぶたを開けると月が少し小さくなっている。そして鳥がさっきよりたくさん飛んでいる、そんな気がした。
数分でこんなに景色が変わるんだなと思った。白い鳥が下から上に飛びさる。白い鳥の羽の下部をまじまじと見たのは初めてかもしれない。
雲が上から下へと流れていく。私は鉛直上空を見上げている。太陽が左上から射し、左の頭の上のところが少し温かくなってきて朝日が上がった。
リフレッシュになった。虫が飛んできて、私の手に留まろうとした。思わず叩いた。払いのけただけで、つぶしてはいない。死んではいない。電車の音が聞こえる。それもなぜか心地いい。ただの通勤時の無機質な電車音とは大違いだ。
自然の中で感じる無機は、無機質ではなくなるのか。人は自然に帰るべきだ。今茂みの真ん中。
スズメが上空を羽ばたいている。そしてまっすぐは飛ばない。なんだかハエのようだ。たくさん飛んでいる。残念ながら鳥は電線に停まっているのが普通だ。
空を見上げて雀が羽ばたいていると、自由に駆け回っているように見えた。空を駆け回っている。
初めて見る景色かもしれない。月のそばを、つまり月を背景に5羽のスズメが縦横無人に自由に駆け回っている。そしてその月には少しモヤがかかったような雲がかかってきた。朝日に照らされてその雲が際立つ。スポットを浴びてステージ上からスモークが上がっているような感じ。トンボが左から横切る。人は自然に帰るべきだ。
今がその時なんじゃないだろうか、まずは私から。
芝に付着している水滴はキラキラしている。その水滴一つ一つがはっきり見える。自分の顔が映り込む?
地上から183センチの高さの目線と、足元では景色が全く違う。
ラジオ体操で体が温かくなった。
ロクはなかった。つまり死体はそこにはなかった。
血痕は残されていた。他には何が残されているのか。
現場① 龍山城跡 弁天橋付近
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管を巻いてばかり同僚がいる。
いつもそうだ。
少しは是正されたのか? 最近はペアにならないので実情はわからない。
口からは悪口しかでない人だった。女性だ。
しかし最近は男女関係なく、ロウガイと言うか、若年性のロウガイが多い。男性の方が多いと思う。ハコで夜勤中、寝たまま生きていない。起きないのである。正確には起き上がらない。寝込んでいない時もある。なので時々声をかけてくる。しかし、いびきをかいているときもある。
新米のペアはペア長がそれだと、何もいえねぇ。
それがハコ長なら.....どうずればいいのか。
私が新米の時は、ペアが全く仕事をしなかった。無線をやらない。運転をしない。私バカりが仕事をこなした。しかし結果それでよかった。そのペアはほどなく依願退職した。背景は割愛する。
その退職したペアとよく飲みに行っていたのが、ロウガイハコ長だ。癖がすごいので、今後のために割愛せず、話すことにしよう。
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その前に大事な事。基本的に隣の署の管轄を越えての捜査はしない。しかし刑事課等は隣の署の管轄まで容疑者を追跡することはある。
ドラマにあるようなことばかりではなく、笑顔も出ない、耐えられないような事案や直視できない遺体を見ることもある。匂いも服に付ききつい。
捜査本部ができたら、帰りますと言い出せるわけもなく、連続当直地獄のはじまりだ。
洗濯物を回収してもらうため妻に八王子署に来てもらう。自分の足では自宅に戻れない。
交通ももちろん24時間体制で、三交代、8班に分かれる。結果的に30時間勤務になっても、元から働き方改革の概念はないと言われている。引継ぎと報告、各種作業で、非番も仕事になったことが幾度となくある。妻帯者は夫婦間でミスコミュニケーションが続くと離婚に導かれる。自然にだ。隊員の自殺もある。なので昔は警察学校がより厳しく、そしてとても厳しく、ある種の倫理はなく更に過酷で、人間性を否定され自分を見失うほど叱責され、500メートルの深さの地中に埋められ身動きがら取れないような夢をみた。全然厳しくなかったと言う人もいた。感じ方は人それぞれだ。しかしみんな同士であることは間違いない。
数で制圧する。暴漢が暴れて、刃物を懐から出すなどを想定すると、警察署にニコニコしながら現れて、勤務が明ける分隊長に話しかける輩がいたときは、出勤中の隊員や、署内の人間が、会話中の二人を横目に、やや足早に2メートルの側を通り過ぎていく。これが通常の流れだ。何も問題ない。先日ストーカーが事を起こす前から容疑者をマークし、結果刃物を振り回したにも関わらず、数で制した事案があった。事件前から捜査がなされていたので、一般からも多くの称賛の声が聞かれた。事が起きてからしか動けないのがもどかしい。広い意味でより防犯が命。そんな組織と社会になれば日本もまだ捨てたものではない。私はこの過渡期の日本も、大好きだ。間違いない。
上司や同僚が勤務をしている状況では帰宅できない。飲みも仕事のうち、お酌をして回った挙句私は頭痛と嘔吐で次の勤務に支障が出た。アルコール検査後自宅に缶詰だ。ハコズメも大変だ。最後はハコに戻る者もいるし、途中でハコ長になる者もいるが、二日酔いのタクヅメは萎える。
第一現場から…..キロ圏内に警戒監視発令? そうか。
近隣の町田、高尾、多摩中央、日野、昭島、埼玉県警所沢、青梅、神奈川和久井、相模原南、飯野、狭山PSに情報がリンクされた。F35も顔負けのリンクシステムだ。ただそのシステムをどれだけ活用し、日常的に運用できるかはそれぞれのOSとPS次第だ。PS5のあのゲームもやりかけだったな。任務の遂行が最優先にも関わらずそう思う。
次の現場があると仮定して、現着一位はどこのPBか、機捜か、自ら隊か、PSの警らか、1番車両み〜つけた!!
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ガイジつまり警備課は刑事課と共に合同捜査するが、交通課はそれらの事案に関わらない。しかし偶然当該不審車両を止めてしまった場合はどうなるのか。どうなると、そちらの方たちは思いますか?
その通りです。そうなりますよね。
そしてうちのハコチョウはまたまたたぬき寝入り、一丁上がり。
はぁ? どないなっとんねん、春日...
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警視庁の前は福岡県警にいた。
糸島署で勤務する前は、福岡県警本部、その前は春日署だった。春日署のすぐ近くには航空自衛隊春日基地がある。陸もある。空自の隊員とある居酒屋で現実に近接格闘訓練ではなく、近接格闘模擬をしたのが山野だ。彼は警察学校の同期で、今でも時々飲みに行く時がある。
関東の大学卒業後、愛知県警、広島県警、福岡県警を受け結果福岡に移住することになった。
当時の福岡は、急激に人口が増え始めていたのか、地下鉄空港線は朝から混んでいた。
5年ほど上の先輩は、10年前の地下鉄の車両内は今ほど込み合っていなかったという。
山野は、今何の事件を追っているのか?
{山野、そっちのはどんなやまなんだ?}
「たたき」
そう言うと、彼は200系のクラウンに乗り、他の2人ともに現場を足早に立ち去った。機動捜査隊よりも早くにだ。
山野にLINEでいつまで東京にいるか聞いたところ、以下のような返信がきた。
「あと[半日]+[1日]」
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マトリや国税と鉢合わせたことはない。
しかし八王子市の税務課職員と対象者の家付近で会ったことがある。
彼らは令状なしで家宅捜索できる。家の中を見せてもらうという点に着目すると、
警察手帳よりかなり強い権限と実行力を付与されていて、悪質な脱税と日々対峙している。
そしてかすめ取る。いや、かすめ取っていた税金に相当する額を徴収する。
それでも対応できない場合は、国に引き継ぐ。その後は自動的にベルトコンベアーのように、しかし綿密に、隠密に、迅速に捜査が行われ、結果だけ八王子市役所の税務課に流れてくる。
国税はまるで、「俺たちがやらねば、誰がやる」の航空自衛隊[航空支援隊]のような存在だ。闇夜のうちに機会をつくり、翌朝には標的せん滅に至る。
いつものように話が脱線したが
福岡県警の八王子署滞在は実質あと1日を切ったということになる。
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今も昔も市役所とその管轄警察署は連携していることが多い。
しかし、それぞれ捜査中の事案を語り合うことができないのは周知の事実である。
もしこの事案が、あの脱税と関連しているとしたらどうなるか。事実を元に推察するだけではなく、裏どりが必要だ。そんな時間が十分にあるのか定かではないが、手と体を動かすしかない。
八王子市役所住民税課を訪ねることにした。
…そんな夢を署の仮眠室で見た直後に目が覚めた。武道場の布団ではなかったので、あまりいびきは聞こえず熟睡できたほうだ。
そうだ今俺に非番はない。
署に詰めている状態であることを思い出した。
頭の中では何かがループしている。まだ正確に把握していないが、もとペアにはいつも助けられる。
思いやりをありがとう。
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|4+1|>=x
|x - 3|<=y
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脱税の事案は八王子駅栃の木交番に詰めていた時に担当した。
深夜110番通報があり、子安町のとあるマンションに現着したのは、昼12時頃だったか。通報内容は強盗だった。
11階の一番南側の部屋、すぐ隣には非常階段。エレベーターからは一番遠い部屋だった。
インターホンを押し、通報者は部屋の中のモニターで、現着した当番のPM3人のマスク姿を確認したはずである。
制帽はPCに乗るときに邪魔にならないタイプだ。
この制帽になってよかった。昔は、制帽を抑えて走るか、全力で走ると脱げるのは当たり前だったはずだ?
胸のカメラも有効だ。最近は携帯電話で現場を動画配信するやじ馬も多い。
他にやることはないのか。そんなに暇なのか?
他にもっと大事なことがあるだろ。
「通報した(通報者)さんですね? お怪我はないですか? ん?その右腕どうされたんですか?」
「...これは、違います」
明らかに応戦した正当な防衛の傷だった。その若い女性の右腕、外側と内側のあたりに引っかき傷のような、みみず腫れのような痕ができていた。通報者は直後に左手で右の袖をさっと下ろし、左手で右手首をぎゅっと握るようなそぶりをした。結構な握力でだ。左腕も裂傷があるように見受けられた。しかし傷のことはそれ以上聞き出さずに話を続けた。
「何時ごろでしたか、その男が訪ねてきたのは」
「よく…覚えていません…」
答えを準備していたかのように即答だった。
何か隠してんな。
3人のPMは顔を見合わせて、目でそう会話した。
「救急隊が来たようです。その傷の応急手当をしてからでかまいませんので、八王子署までご同行いただけないでしょうか?詳しいことは警察署でお聞きできればと思います」
「あ、 はい」
通報者の顔はずっと無表情のままだった。
我々よりも無表情。我々も比較的無表情で話を続ける。感情移入と私見は禁物。
{あとで火の元に注意して出ましょうね、念のためですが、着替えを少しお持ちください}
容疑者は逃走済み。何も落とさず逃げていた。鑑識によると指紋も残さず、靴跡もでない。となるとプロ集団か
単独のプロ の可能性が高い。プロかセミプロ、素人ではない。教務上はそうなる。
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マンションを巡回連絡で訪れた際に市役所税務課の方と話す機会を得たのは偶然が重なった結果だった。その背景は公務の都合で割愛する(すべてをここで話すと俗にいう始末書ものになってしまうのでそれはなんとしても避けたい。あれは時間と労力の無駄でしかなく再発防止にはならない。なるはずもない。しかし決まり事なので上も書けといい全部読みもせずに押印する作業を誰かに依頼するしかなかった)。
{このマンションに対象者がおられる、おられたということでしょうか?}
「はい」
市役所職員は携帯電話で誰かと話しながらただそのように口から言葉を発した。
以下も同様だ。
{それは男性ですか?}
「いいえ」
{既婚者?}
「実質は、わかりかねます」
{50代ですか?}
「はい、おそらく」
{複数の高級車に乗っていた?}
「はい」
{ここ半年で?}
「はい」
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今回の窃盗事案が起きたマンションの関係者と八王子市が追っていた対象者の特徴は一致していない。
そんなことを考えたところで、タイミングがいいのか悪いのかわからないが、あるデータを各PMが端末受信した。
新たな被害の様子がPS間で情報リンクされたと同時に
各PM端末に送られたのだ。
青梅署管轄でロク、熊の襲撃と思われる。
解剖の結果窒息した後倒れ、その後に熊に襲われたとの鑑定だった。ご遺体の首には締められた跡があった。紐で絞められたのではなく、何かで押さえつけられたような圧迫痕だったようだ。
しかし一着、つまり着衣に乱れはなかった。
発見したのは、奥多摩KBの山岳救助。先着○○巡査部長。
現場② 奥多摩 町日原 小川谷林
Senza fretta,
Senza costrizioni,
Senza oppressioni,
Senza paura.
Non vorresti tornare in un luogo così tranquillo?
「こんなところではなく
本当に大切な人と
大切な時間を
いつもと違う場所で
過ごすのはいかかでしょうか? 」
あの漆黒のAIスポーツカーがそう言ったような気がした。
たしかに、そろそろ自然に帰るときだ。
まずは、私から。
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冬の海は寂しい。
空の色よりも海の色の方が灰色だ。
それは日が差していない時だが、日が差し少し水色がかった、緑がかった灰色に変わった。
波は少し深い緑。
それは大きな川である。
そして沖から大きな波が白い波を立てて、こちらに向かってきている。小さなつ波が川を駆け上がっているようだ。
そして一羽の鳶が低空で、一直線に羽ばたいて飛んでいった。
ずっと前に制限速度40キロの道を法定の40キロメートル/時で走っていた時、上空に猛禽類が一羽。
その一羽は直進で飛んでいるわけではなかった。
少し斜めに、いやただ風に乗ってまっすぐ飛んでいたような気がする。
今右手前方にヒノヒカリを浴びた。
午後2時半波はキラキラと輝きは、英語で言うとグリタリングに当たるのか。いや何か違う。
波はどんどん満ち満ちて川を登っていく。
小さなつ波、それがとても綺麗だ。
こんな曇った日に少し光が差して、こうして波が川を駆け上っていく。この景色を見ることができて幸せだ。
三途の川もこんな感じだったのか。
大切な人の最期がそうであって欲しい。そう願うばかりである。
そして日の光が暖かい。
左斜め前、斜め上の頭頂部に朝日を浴びたような感じの私は、今南を向いているのか?
直後に左斜め前方から右へ目の前の空中をもう1羽が飛んだ。
その瞬間急降下し、谷へ隠れ見えなくなった。
春のようないい風の匂いがした。
人はもっと外に出て、自然を感じた方がより健康的になる
そう今実感している。
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現場③ 八王子駅栃の木交番管区 子安町 マンションAlfa11階 南の部屋
※写真の掲載は、現時点では未定
任意で八王子署に引いた、両腕をケガした女性の名は、
ミチバリオ 道庭りお(20歳) 専門学生
専攻はデータサイエンス
道庭は、料理教室というかとあるクッキングサークルで知り合った
カガミシノブ 加賀見忍(53歳) サロン経営者
と意気投合し
一緒に買い物や旅行に行った写真を我々に開示した。
特段変わった様子はなかった。
「逃げた男の消息は不明だが、防カメをまくる前に
道庭りおのスマホをまくった方が効率的か。」
八王子警察署刑事第一課強行犯係の山本はそう思った。
しかし任意でのすべての写真、動画、SNSの確認は難しい。
街頭防犯カメラシステム、別称ITV監視(工業用テレビ)、CCTVシステムで洗い出すと同時に、 防犯カメラリレー捜査、つまり複数のカメラ映像を繋ぎ合わせて男の逃走経路を特定する捜査が始まっていた。
またAI映像解析システムで防犯カメラの映像をAIが高速・高精度に解析を行う作業が始まっていた。男の特徴や特定を行う顔認証技術を含む技術で実際本当に、とても優秀だ。みな足を使えなくなるわけだ。そんな環境は中国だけではないのだ。
当時私は、刑事課に引継ぎ後、交番に戻る際、道庭りおの落ち着いた口調に違和感を持っていた。他の隊員も同じだ。最初から顔を見合わせてそう感じていた。
現場②の鑑識結果、遺留品などから、被害者の身元が割れたら、捜査本部祭りの始まりだ。
ついに来る。あの警視庁刑事部捜査一課の名前は思い出したくないが日永だったか、変わった名前のあの男。
殺人事件は、通常現場を管轄する警察署の捜査員と、警視庁本部(以後、本社ビルとする)の捜査一課強行犯担当が合同で捜査本部を立ち上げて捜査を行う。
本来は青梅署に捜査本部ができるはずだが、今回は諸事情により
八王子署がその名誉な職務を拝命した。
{
我々がやらねば、だれがやる
};
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朝9時ごろ署の中庭から外の通りを覗くと、10羽のスズメが交互にちゅんちゅん鳴いていた。
もやがかかっている。
朝もやで、少し白くかすんだ景色。
しかし朝日は眩しい。
白いもやに朝日が乱反射しているのか、目の前に広がる景色が視覚的に明るい感じだ。
真冬だというのに、小春のような陽気なのか。
陽気と言うほどではない。ただ10羽のスズメは何だか楽しそうだ。
天災の前兆かとも思った。
野鳥が一斉に一方向に飛び去ったり、小動物が鳴き続ける。
その直後に、天災が起こることもある。
しかし、そうではなかった。
窓に何かが付いているのを見つけた。
ゴマほどの羽虫が二匹、それぞれの腹部を付けて一直線になって静止している。春ではないか。
ふとした瞬間、その二匹は腹部を付けたまま飛び去った。
お幸せに。
静かに一日が始まった。
司法解剖の結果、被害者は賀神しのぶ(53歳)。
頸動脈の圧迫により死亡。
重要参考人として、道庭りお(20歳)を引く。
一度自宅に帰していたが、青梅署の職員が交代で張っていたのでそれは問題なかった。
参考人に配慮し、女性職員が寄り添う。
道庭りおと賀神しのぶは、クッキングサークルで知り合い親密になっていた。
スクールではなくサークルなので、料理教室のキッチンなどで調理をしている訳ではない。
それぞれの自宅に材料を持ち寄って、料理をするのである。
道庭りおのマンションのビジターパーキングに高級外車を停めた賀神しのぶが、周辺で度々目撃されていた。
八王子市が追っていた対象も、賀神しのぶだと後に判明。
脱税の対象が消されて、容疑者の男は逃走中だったが、Nシステムと防カメリレーにかかったようだ。
捜査員は、道庭りおと賀神しのぶが一緒に映った写真などから、賀神しのぶの高級外車の車番を割り出し、Nシステム、つまり自動車ナンバー自動読取システムにかけていた。
同時にAI画像解析で捜査支援を行う。
各PMの端末が、男と車両の画像を受信した。
男は道庭りおが通っていた高校の同級生だ。
現在21歳。
男が賀神しのぶの高級外車を乗り捨てたのはどこだ、Nシステム。
「おおぉ」「よぉし」
捜査本部に怒号と雄叫びが轟く。
200系、210系、220系と共に、SUZUKIキザシ、トヨタアルファード、本田アコードなど多くの捜査車両が一斉に署を出て行った。
解析が同時に進み、男の画像が鮮明になり、卒業アルバムらしき画像も出力された。
「男の名は、◯◯ ◯◯ 。この場では、伏せさせていただきます。いいですね?」
{無論}
「現場臨場、1番は誰だと思いますか?」
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ん? また、夢を見ていたのか?
どこからどこまでが、夢なんだ。
八王子署から、大量の車両が出ていくということは男が乗り捨てた場所が、八王子管内だったということか。おそらくそうだ。
大量の車両が一斉にけたたましく、出ていく訳ではない。
こっそり、一台ずつ、鳴らさず、回さず
現場にかけつける。
夜中なら尚更。近い局、つまり機動捜査車両も駆けつける。
ちょうどその頃、交通機動隊が通常の取り締まりの最中にある男が乗る国産車両を止めた。
一時不停止だった。
助手席から降りた機動隊員が男の車両の右後ろから近づいて運転席の窓を開けるよう話しかける。
運転席の隊員はハンドルを握ったまま、男の逃走に備えている。
助手席の隊員は、左手の甲を上にして手のひらを開き、指を開かずにその手を下に下ろしたりあげたりするジェスチャーを見せながら少しかがんだ状態で話しかけた。
「パワー ウィンドウを降ろしてください。はい、こんばんは。エンジン切ってくださいね。急いでいるところすいません」
男の目は開いているものの、どこを見ているのかわからないような、目線をしていた。遠くを見ているのか見ていないのかわからない状況。その隊員が続ける。
「さっきのところ、停止の白線、見えてました?ここはとても出会い頭の衝突が多い場所なんですよ。すーと出てましたよね。」
PMの胸カメラが、本社ビルのデータセンターに自動的に男の顔の情報を送信。すぐにPMの端末にPOSITIVEと表示された。マンションから逃走した男の顔とこの男の顔が合致したのだ。
八王子署の鑑識課から本社ビルの科学捜査研究所に送られたデータから抽出された、写真や動画は、デジタルフォレンジック、つまり電磁鑑識に回される。
証拠保全が大前提だ。
本社ビルが運用するのは、SSBC(捜査支援分析センター)だ。
助手席の隊員は、男に車を降りるように促し、PCの後部座席左側のドアから男を乗せて中央に座わらせ、自身も後部座席左後ろのドアから乗車しドアを閉めた。事前に車外に出ていた運転席側の隊員は、運転席のドアを閉めた状態で、一連を見守っていた。
後部座席の左側のドアが閉まったのを確認した後、後部座席右側のドアを開き、運転席の隊員も後部座席右側のドアを少し開き、後方の安全確認をした後に、後部座席右側に乗り込む。男を二人の隊員が挟み込むような形になった。
まもなく捜査一課と刑事課のペアが乗る車両が、真後ろに停車した。
ジラ車両も男の車の前に付けて止まり、結果4台の車両が縦列駐車した。
アルコールと薬物の検査は陰性。心因性か寝不足なのか。八王子署まで、その4台が帯同し八王子署に到着次第、みがらを刑事課に引渡した。
帯同の時、5台目と6台目の車両が後方から追尾していたかもしれない。しかし背番号なしなので、どこのだれが乗っていたかはわからないのである。
「対象者は、八王子署に到着した模様。
各局、現場の処理が終わり次第、速やかに捜査本部に帰投されたし。以上、警視庁」
私たちは、男が乗り捨てた賀神しのぶの高級外国車両が見つかった現場に向かっていたので、その内容は無線で確認できた。
しかし、突然捜査車両の助手席と運転席の間に、かつての伝説的なTVドラマ『ナイトライダー』 の赤い点滅のようなものが現れてこう言ったような気がした。
「Il testo di "Cherry" di Spitz è fatto di frasi fantastiche, non è vero?
本当にいい歌詞ですね。そう思いませんか?」
それは、山野が発したことばではなかったか?
否。
なんだかへんな感じた。今は捜査中のはずなのに、なぜ青い空と白い雲が見えるんだ?
わたしは夜間運転していたはずなのに、青空を見上げでいる。
雲が右上から右下方向にゆっくり、ゆったり動いていて、なんだか落ち着く。
遠くの白い雲には夕日が反射し、優しいわたあめ色をしている。
日常の繰り返し。
それがどんなに平和で幸せなことか、それが少しわかった気がした。
ふと先日、恩師に会えたことを思いだした。
若い頃から食事も運動も程々だったらしい。
だから、100歳をこえても背筋がピンとして、声がハキハキしていて、笑顔だ。
現役を引退しても、生涯、社会貢献できることが、人にとってどれだけ健やかに生活できるかよく理解できた。
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ふたこぶラクダの山を見上げると、その奥に青空が見える。
雲を薄く引き伸ばしたような白い線が、真横一直線に2本。
太陽は真上、いや30度位だろうか、上からまぶしい夕日。
風は冷たく、しかし心地よい。
子供たちは無邪気に遊ぶ。
芝生は緑褐色。
ちょっと上までは登れないんだよ。危なくて登れないんだ。
お父さんあなたは大丈夫。
俺たちは俺たちこそ。
靴底がドロドロの赤茶色。
芝生は海松色(みるいろ)に近い、というか、明るい鶯色。
0歳から1歳の子だろうか。
あるお母さんがおんぶ紐でこどもをおんぶして坂を登っているのが見えた。
そのお父さんは、後ろからお母さんのおんぶ紐を支えているが
子供の背中を押しているだけだ。
これではお母さんの肩の負担は減らない。
子供のお尻を持ち上げれば
結果肩紐を持ち上げる形でお母さんの肩が楽になる。
経験したから言えることで、今私が1歳の子を育てていて
妻が同じ状況だった場合、最初からできたとは限らない。
否。
できていた。
私は最初から、力学的にか直感的に
妻の肩に負担がかからないように
こどもの臀部を持ち上げる作業を行っていたことを
ふと思いだした。思いやりか。
子育ての旬な経験をシェアできることはないだろうか。
突然背後から気配。
なんだよ。びっくりした。脅かしたの驚かしたのか?お化けかと思った。
びっくりした。お化けと思って。
私の背後から長男が脅かしたのだ。
一方、70代だろうかリタイヤをしたであろう男性が、赤いベンツを駐車場で清掃しているのが見えた。
左後ろのドアが安全バーであろう、黄色い金属のポールに当たっている。この車8,000,000円するかもしれない。思わず声をかけた。
ここあたってますけど、大丈夫ですか?
公務員を引退したような顔。
その男性は、はぁと言う感じ。
無表情でドアをポールから離した。
しかしふと見ると、バキュームで車の中を清掃しながら、また同じ場所を黄色いポールに当てていた。
まぁそこは人から見えない箇所なので傷がついても問題ないのだろう。
なんなんだ?これは、俺は今どこにいるんだ?
死んだのか 走馬灯なのか わけがわからない。
捜査車両に乗っていた記憶はしっかりある。
摩訶不思議な世界に、突然飛ばされたような。
お父さん!
何?
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金色の芝生の上には、ちりばめられたダイヤモンドダストが地面でキラキラと輝き、30度の角度で今度は朝日か。その芝生を触ると、指先にもダイヤモンドダストが。
地面に広がるダイヤモンドダスト。なんと美しい。宝石より美しいのではないか。自然の中で、太陽光だけで光る。芝生に降りた露。美しい。芝生に木の実が落ちている。枝も落ちている。小川は流れていないが小石はしっとりと濡れている。なんと美しい。朝日を背にすると、景色は全く違う。地面はダイヤモンドではなく、乾燥して面白くない。しかし背中は暖かくなり鼻息は一瞬白い。
振り返って、朝日を逆光に見ると、地面にはつゆだくのダイヤモンドダスト。もはや埃ではない。朝日を30度の角度で、まつげの上の方から感じながら、その朝日は瞬きをする度に放射の光が、なびかず動く。そのまま後退りすると、地面がまるできらきら光る氷のようなそんな景色が見え、そして木々の影が長い。朝日のせいだろう。常緑樹と落葉樹が埋もれ重なり、落葉樹は一見悲しそうだが、朝日を浴びてなんだか晴れやかな感じだ。木は白骨化してるようにも見える。その木の中には、水が流れ、養分を30メートル、いや15メートル上空まで毛細管現象で引き上げていくのだろう。
自然は美しい。森は守りと深み。いろいろな緑、茶色のような緑、いろいろな木々が同じ場所に混在していて、森といっても1つとして同じ木はない。そして秋に見た景色とは全く違う。当たり前だが紅葉は全くない。茶色と緑の世界。木漏れ日の中で枝が太陽に照らされてなんだか笑っているようだ。私の心も晴れやかなのだろう。この状況で、鳥のさえずりがまた格別だ。カラスの声さえもだ。いろいろな鳥がいろいろな鳴き方をしている。野鳥を全部捕まえて、ここに並べるとどうなるんだ。想像がつかない。
人は自然に帰るべきだ。
そういつも。
まずは私から。
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